院長ブログ
国際美容外科学会、教育委員会のチェア
国際美容外科学会(ISAPS)には合計20くらいの委員会があります。現在私自身はSafety Committeeという医療安全委員会とでも訳せばいいのでしょうか、要するに美容外科の安全な手術のための委員会で活動を続けています。私自身はこの国際学会の会長を2年間担当したわけですが、それより以前には教育委員会という美容外科の手術指導を担当する委員会に8年間ほど所属していて、その最終の2年間はチェア(委員長)をしていました。たくさんある委員会のうちEducation Councilと言われるこの教育委員会が一番多忙な委員会ということになっています。
国際美容外科学会の主な活動の一つは毎年世界中のあちこちの国で、その国の美容外科医の手術指導を行うことです。毎年大体20回くらいこの講習会が世界のどこかで開催されています。この委員会のメンバーも毎年何回かは世界のどこかに行って手術の指導を担当しています。講演をする医師の発表だけだったり、実際に現地で何人も患者さんを集めて、世界中から招待された医師が手術室で会場からの質問を受けて、いろいろ説明をしながら実際の手術をしたり、死体を使った手術の練習を指導したり、いろいろのスタイルで手術指導をするわけです。そのために世界から約20人くらいの医師を指導医(ファカルティー)として招待をして、その交渉、通常3日間の講習会のプログラムの作成、招待した医師の採点、評価などを行っているのがこの委員会です。このチェアを私は2年間担当していたわけですが、これが会長と同じくらい激務であるわけです。1年間に世界中で20回もこのような講習会を準備してあれこれ担当するのは本当にきつい仕事です。日本を含めて、アジアでこの委員会のチェアになったのは今までに私だけです。アジアから最初に私が選ばれた時は光栄なことだと思って喜んでいましたが、あまりの激務で話が違うなどと途中で思ったこともありました。でもだれかが世界の美容外科ためにやらないといけない仕事なので、とにかくまあよく続けられたと思っています。名誉なことであり、ある意味世界を動かすこともできるような仕事なので、私の後に日本からもどなたかにぜひ頑張っていただきたいと思っています。今のところアジアからは2人ほど候補がいますが、日本の美容外科医が入っていないのは残念なことです。
この委員会にはあまり公表されていないルールがあります。それは世界中からこの医師に手術指導をしてもらいたいというリストを常に作っていることです。これは各国にISAPSの代表としての医師が決めてあって、さらに各国の美容外科学会会長や形成外科学会会長に、手術結果がすばらしい医師や新しい手術を発表してその結果が優れている医師などを毎年推薦してもらっているわけです。このリストの中から委員会のチェアが人選を行ってプログラムをつくって、その講習会への招待状を送っているわけです。ある国での講習会に講師として参加してもらった場合、次の活動はこの医師の採点を内緒で行っていることです。いい点がつけば、それ以降も何回も招待状が送られることになります。一方いい点がもらえなかった医師、たとえばプレゼンテーションの質がよくなかったとか、会場からの英語の質問にうまく回答ができなかったとか、実際に現地で手術を何人も担当することもあるわけですが、手術後にトラブルがあったなどのケースでは、今後招待しないというリストにいきなり入れてしまうこともあるわけです。こういう活動を続けて国際学会の承認したレベルの高い講師陣というリストを常に作っているわけです。当然この委員会のチェアとメンバーは全員このリストに入っています。また、このリストはこの委員会のメンバーだけが知っています。このような活動をして世界の美容外科を安全でレベルの高いものにしようといつも活動が続いています。今のチェアもよく知っている医師ですが、皆さんチェアになると本当の頭が下がるくらい頑張っておられます。本当にこの国際学会はすごい医師たちの集まりだなあといつも誇りに思っています。
投稿者:megaclinic
豊胸インプラントの除去の方法
過去にインプラントによる豊胸を受けた方で、そろそろバッグの除去か、入れかえなどを検討されている方も多いと思います。バッグにも劣化という問題があり、現在は豊胸手術を受けてから大体15年くらいで入れ替えをするか、除去をするのが望ましいということになっています。古いバッグは外膜の劣化が起きることがあって、これが起きると肉芽種ができたり、周囲に石灰化が起きて、痛みが出たり、バストの一部が硬く触れるようになったり、出血やリンパがたまったり、レントゲンで影が出たり、引きつれなどが出る可能性もあります。病気になることはないのですが、上記のようないろいろのトラブルが起きてくる可能性もあるわけです。定期検診を受けてもらっている方であれば、このような異常があれば検査でわかりますので、毎年の検診を受けていれば早期に対応ができるわけです。
バッグの入れ替えや除去を行う場合、実際に行う方法は3つのものがあります。バッグの除去のみ、除去と同時に脂肪の注入をしてバストがかなり小さくなるようなことを防ぐ、バッグを除去して、新しいバッグを入れる、などになります。除去のみを行う場合、バストは本来の今の状態のバストに戻ります。豊胸前のバストには戻りません。したがって、以前よりかなり小さいバストになるかもしれませんし、多少下垂などが残るかもしれません。除去のみを行う場合、除去後1カ月はバスト全体の軽い圧迫固定が必要です。これをやっておかないとバスト内に血液やリンパがたまることがあり、これが起きるとバスト全体の収縮が始まりますので、凹凸が残ったり、かなりの下垂のような状態が残ることがあります。この修正はかなり難しいことが多いので、1カ月の軽い圧迫固定は絶対にしておく必要があります。また脂肪注入を行う場合、一度にあまり多量の脂肪注入をすると血流の再開が起きないことがあり、注入した脂肪の壊死や溶解が起きて、しこりができたり、注入した脂肪があまり生着しなかったりするトラブルが起こります。このため状態によっては3か月後くらいに2回目の脂肪注入をしてご希望のバストの大きさになるような調整を行う必要があるかもしれません。脂肪注入を行う場合はバッグの除去と同時にしたほうがバストのやわらかさがあるので、脂肪の生着率が高くなるということがわかっています。バッグの除去の際に新しいバッグを入れておくのはとても簡単な方法で、バストの大きさも自由に選択ができます。以上3つの方法からご希望の方法を選択されればいいと思います。ただ脂肪注入をご希望の場合だけは採取する脂肪が必要になりますので、あまり痩せているという体形の場合は、この方法が難しいという場合もあると思います。
投稿者:megaclinic
PRPプラス成長因子によるシコリ、ふくらみ
先日東京で日本美容外科学会(JSAPS)がありました。私も出席して講演を聞いていたのですが、その中の演題の一つにPRPプラス成長因子によるしこりや膨らみに対する治療についての発表がありました。治療方法としてステロイドの注射を繰り返すか、これでもだめな場合は、メスを入れて切除という方針で講演をされていました。方法としては私を含めて多くの医師が今までずっと試みてきた方法です。欠点はステロイドの注射で確実にふくらみやしこりが治らないことが多いこと、副作用として、液が拡散するために目的とした部位以外にへこみが出たり、皮膚の萎縮、変色が起きることがあるということ、などがあげられていました。切開は確実に減量ができるということを示されていましたが、やはりメスを入れるので、キズが残ることが欠点です。現状では多分多くの医師がこのような方法で治療をされていると思います。私自身も同じ方針でずっと行ってきましたが、やはり同じような悩みがあります。ステロイドが無効なことがわりにあり、メスを入れて除去の場合、キズが残るということです。
やはりキズが残らない、メスを入れないという新しい方法としてニードルサクションをさらに安全で確実な方法として確立したものにしていく必要があるように感じました。ただ今の段階で、ニードルサクションはキズが残らないという利点がありますが、手術中に仕上がりの確実な予想がまだ難しく、3か月待ってから追加のニードルサクションや状態によっては微量の脂肪注入などで調整がいることもありうるというのが現状です。複数回の治療が必要になるかもしれないという点は、なんとか改善させる方法がないかと試行錯誤中です。さらに検討、研究がいるような日々ですが、なんとかこの治療を安全で確実なものにしていきたいと思っています。当初は3日間のガーゼでの圧迫固定をすればあとは待っているだけでいいと考えていたのですが、やはり皮下には薄い層であっても瘢痕ができるという考えから、途中経過を見て、必要ならピタシートやレストンを使っての在宅時の圧迫固定の指導やその継続、場合によっては内服薬や軟膏、ステロイドの注射を繰り返すことで早く炎症を抑えたほうがいいというケースもあるように考えています。治療をして全く通院をしてもらえない方もまれにはあるのですが、経過が見れませんし、途中の管理を指導できないので、時々通院をして状態を見せてもらったり、これが遠方で難しいという場合でも写真で経過を見せてもらったほうが安心です。こちらも勉強中というところがあります。新しい治療の場合、私自身がどなたかの医師から学ぶということができませんので、患者さんが私の先生ということになっているのが現状です。
投稿者:megaclinic
NHKのニューイヤーオペラコンサート
オペラの好きな方なら多分NHKのニューイヤーコンサートは毎年見ておられるのではないでしょうか?日本のベストという方々が出演されますので、絶対に見逃せないですよね。私も毎年見ています。ソプラノの森麻季さんとかテノールの福井敬さんとか、バリトンの黒田博さんとか、もう私自身がすごいファンなので、たまりません。どうしてあんなに素敵な声が出るのでしょうねえ。あんなに美しく歌えたら本人も楽しいと思います。ブラボーの連発でした。もちろんこの番組を楽しむ時はワインですよね。今回はカリフォルニアのシャルドネにしました。おいしいワインを楽しみながら、美しいオペラを聞くなんて、至福の時です。
今回すこしだけ残念だったのは、司会を担当された宮本亜門さんです。以前はこういうことがなかったと記憶しているのですが、今回は台本をずっと読んでおられて、これも時々言い間違いとか噛んだりされて、こういうのはいけませんよね。紅白歌合戦の女性の司会者の橋本環奈さんのようにすらすら楽しくノリノリでやってほしかったです。話がはずれますが、今回の紅白歌合戦の女性司会者はすごかったですね。歌って踊ってすべらず話して、最高でした。今回のオペラの司会はちょっとどうなのかなあと思ってしまいました。他の部分では楽しくて仕方がなかったのですが、司会の部分になると、盛り上がらないようなことになってですね。ちょっと気になってしまいました。でもこうもりとかトスカとかトゥーランドットとか、もう素晴らしかったです。またゆっくりいいオペラがあれば、聴きに行きたいですねえ。みなさんにとって最高のオペラって何ですか?私はフィガロの結婚です。これ楽しくないですか?歌が本当に素晴らしくて、モーツアルトは偉大だーって思いません?
投稿者:megaclinic
京都大学形成外科初代教授一色先生
京都大学病院の形成外科の初代教授の一色信彦先生が昨年亡くなられました。私が京大の形成外科に勤務していた時に初めて形成外科が講座になり、その際に教授選があって、耳鼻科におられた一色先生が初代形成外科教授になられたわけです。それまでは形成外科という診療科は京大病院の中では皮膚科の形成外科診療班と耳鼻科にも同じようなグループがあったわけです。各大学でいろいろ状況が異なりますが、形成外科の講座がなかった頃は、耳鼻科で唇裂や口蓋裂、耳の変形、顔面神経麻痺などを治療していたグループ、整形外科で手の外科を主に治療していたグループ、私たちのように皮膚科でやけど、外傷、皮膚がん、先天奇形などを治療していたグループなどのように、現在形成外科で治療をしている分野がどこかの科で診療をしていたわけです。それが次第に専門科として成立して形成外科に発展したわけです。もともと一色先生は喉頭が専門で、声帯などの治療では世界的に有名な方でした。本来は耳鼻科の教授を目指しておられたと私は今でも思っています。なぜ形成外科の教授になってしまったのかというのはなぞですが、私が思うには、当時京大の耳鼻科の前の教授である森本先生という方がおられて、この方が京大で形成外科らしい診療を開始したのは私だと言っておられたような記憶があります。形成外科が講座としてスタートするのであれば、私の弟子である一色先生が教授になってほしいとかなり圧力をかけられたのではないかなあと今でも思っています。とても個人的な見解ですが、多分当たっていると思っています。声の研究では世界のトップクラスである一色先生は、形成外科の教授になりたいと本当に思ったのでしょうか?森本教授の圧力に負けてのことであったのであれば、一色先生にとっては無念なことだったのかもしれません。お酒の席などで一度一色先生に聞いてみたかったです。
韓国の有名なオペラ歌手が甲状腺のガンで声を一度無くされたわけですが、この声を再生させる手術を一色先生が執刀され、この歌手の方が見事にオペラ歌手として復活する話をNHKの放送で見られた方もおられると思います。本当に感動する話でした。この見事な手術をされたのが一色先生で、形成外科とは関係のない分野で世界的に有名だったわけです。本当は耳鼻科の教授になりたかったのではないですか?と今でも聞いてみたいです。国際喉頭学会というのがあるそうで、昨年一色賞という賞が設立され、最初の受賞者に一色教授が選ばれたそうです。ご冥福をお祈りします。
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冬の味、カニ
冬になると食べたくなるものがあります。カニとふぐです。ふぐは時々博多か小倉などに食べに行くのですが、カニは絶対毎年北陸の温泉に食べに行きます。私が小学生の時には毎年福井県の三国サンセットビーチの丘の上にある祖父と祖母が住んでいた京福電鉄の福井支社長の家で過ごしていたということもあって、とても懐かしいのです。ビーチは海に向かって右側に岩場があって、そのさらに右側に東尋坊があります。左側は九頭竜川が海に流れこんでいて、この川にそって灯台があります。ここでもよく遊んでいました。右側の岩場はかっさきと呼ばれていて、ここに素敵な宿があります。望洋楼という旅館です。露天風呂の温泉もあって、ちょうど海につながっているような露天風呂で、冬の風の強い時などは波しぶきがかかりそうな状態で、絶景です。ここでおいしいカニを食べることができます。子供の時に目の前の海で泳いでいたので、とても懐かしいわけです。ここが北陸で大好きな旅館の一つです。
もう一つ気に入っているのが、石川県の山代温泉にあるべにやむかゆうです。ここに行かれた方はわかると思いますが、とにかくカニづくしというコースで食べるともう最高ですね。お風呂も素晴らしいです。ただ海からは遠いので、海が見えないのが残念ですが、それでもここは楽しすぎます。大体この二つのいずれかの旅館には毎年行くことにしています。カニもふぐも取れた場所まで行って食べるのが最高ですよね。冬の温泉とカニとお酒、、涙が出ます!
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美容外科で絶対にしてはいけない手術
日本やアジアの美容外科でトラブルが多発しているものがあります。多くが治療がとても難しく悲惨な結果になって一生苦しんでいる方もたくさんあるわけです。合併症が多発している治療や手術については、日本の形成外科学会や美容外科学会(JSAPS)、あるいは日本美容医療協会などで一般の方に告知がされているものもありますが、すべてについてそういうことにはなっていません。一部の方法は今でも安全、心配のない方法と広告をしているクリニックもあります。とても残念なことですが、これが現実と思います。私自身が医師として絶対にしてはいけない美容外科手術、治療として考えているものには以下のものがあります。非吸収性の注入物による豊胸、顔への注入(たくさんの名称があり、アクアフィリング、アクアミド、パラフィン、オルガノーゲン、などが報告されています)、成長因子の注入(成長因子単独でもPRPプラス成長因子のどちらも危険です)、金の糸の埋入などです。非吸収性の注入物は注射で入れた部位に留まらないことが通常で、たとえばバストに入れても、これが腹部に流れて、後日バストが合計4つあるような変形を起こしたり、しこりになったり、皮膚が変色してくるなどのトラブルがあります。また体内で拡散しますので、すべての回収ができません。しこりや皮膚の変色、凹凸、壊死、硬化などが起きた場合、この治療はとても難しいことになります。また成長因子の問題はとても多発していますので、美容医療協会への問い合わせなどを見てもらえば、日本中でどれくらいひどい問題が多発しているかよくおわかりになると思います。また金の糸は当初、皮膚が若返るなどの広告を見ましたが、これに対する学問的証拠がないということがわかっています。また純粋の金はこの世に存在しません。つまり必ず不純物が含まれています。これが早期に溶け出して体内に拡散するということが分かってきました。不純物として何が入っているかはわかりません。現状での合併症としてはしこり、異物肉芽種というできもの、凹凸、瘢痕拘縮、硬化、皮膚の変色などの報告があります。また万一発がん性のあるものが含まれていれば、これは全身に拡散してしまいますので、肝臓でも腎臓でも肺でも、どこにでも移動してそこに不純物が留まることになります。そうなると将来の発がんということにつながってしまうわけです。すべての回収ができないようなものを体内に入れてはいけません。一生を台無しにしてしまうことになります。こういうリスクがわかっていながら、なぜこういう治療を今も行うクリニックがあるのか、理解できません。日本はこんなことをしていていいのでしょうか?たとえばフランスでは脂肪溶解注射なども法律で禁止されているわけです。溶解した脂肪が溶けてなくなっているわけではないのです。萎縮して変質した脂肪が残ってしまうことになり、これが何年も先にどうなるのかわからない以上、こういう長期的な安全性が確立していない治療をしてはいけませんと法律で禁止しているわけです。日本もフランスなどに学ぶことが多いと思います。参考までに私のクリニックではフランスの対応を知っていますので、脂肪溶解注射は一度も使用したことがありません。
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場数をふむということについて
何事もたくさんの回数を経験するということはすごいことですよね。その場にいる経験がたくさんあるということはやはりすごいことだと思います。多数の人の前で話をするという経験はどなたでもあまりたくさんの経験はないのではないかと思います。私が最初にたくさんの人の前で話した経験は同志社中学の学内の英語暗誦大会という英語弁論大会の中学生版のような大会の時でした。自分の出番前にはすごく緊張していて、自分が出番の時は途中でどのあたりを話しているのか頭の中が真っ白になった瞬間があったのです。でも実際には堂々と話していたらしくて、学内大会では優勝したのです。でも一瞬ではあっても頭の中にしっかり入っていたはずの内容が飛んでしまって、あー間違えたかも、、、と思って話し続けていたわけです。これはとにかくよかったのですが、人前であがってしまうという経験はこの時が最初で最後の経験だったと思います。こういう経験は大きいですよね。
それ以後人前で話す際にあがってしまうということはなくなりました。でも感動してまともに話せなくなったということはその後経験があります。こういうのってまた別の経験なのなのかもしれません。京都大学を卒業後ずっと大学のテニス部のヘッドコーチをしていたのですが、男子はかなりきつい指導をしても、それなりに頑張ってくれて、何回も個人戦や団体戦で優勝がありました。一方女子は部員が少なかったり、楽しむためにテニスをしていて、試合で勝つなんて考えていませーん見たいな部員が多かったわけです。それがとても長い年月続いていたのですが、ある時女子にすごい部員が入部してきて、彼女がキャプテンになって女子部員全員を引っ張って強くなりたい、負けたくないと頑張りだしたのです。それならと思って私もそれまでの女子部員に対する指導方針を変更して、とにかく鍛えて、鍛えてという方針で数年指導を続けたわけです。その結果最終的には個人戦でも団体戦でも京都大学が優勝を勝ち取るという快挙が続くようになりました。最初にえーっと思ったのが春の関西選手権でした。個人戦ではそれまでにもすごい女子部員がいたわけですが、団体戦で女子が快進撃を続けるようなことは私は一生そんなことが起きるはずがないと思っていたのです。団体戦でベスト4に入って、京都大学女子チームが団体戦で堂々と戦っているという光景が目の前で起きると、ベスト4くらいで私はもう涙目でコートがうっすらとしか見えていないという状況でした。準決勝で京大が勝って、決勝戦に出て、団体戦で優勝した瞬間はもう感激で号泣でした。優勝が決まった瞬間は、部員がみんな優勝しました、勝ちましたー、やったーと言って集まってきてくれたのですが、私自身は優勝おめでとう、すごいなあー、やったねーなどと言っていたつもりなのですが、とにかく号泣していたので、部員のみんなには「アワアワアワー、、」としか聞こえていなかったように思います。でも京都大学女子はその後何度も個人戦も団体戦も優勝をして、日本全体の強豪校になったわけです。それくらい優勝を重ねてくれると、場数をふんだ私も次第に慣れてきて優勝した際は男女合わせて部員70人ほどをコートに集めて、優勝おめでとう、ご苦労!などと泣かずに言えるようになったというわけです。場数を踏むのはとにかくすごいことです。
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法令線のベストの対策は?
法令線は加齢によって目立つ部位の一つです。かなり以前はフェイスリフトで横方向に引っ張るとこれがきれいになるので、フェイスリフトが一番いい方法とされていました。でも5-6年くらい前から国際美容外科学会などで、この方法に対する批判がかなり出てきました。法令線はきれいになるが、横方向に引っ張って法令線を消しているので、小鼻が広くなる方が多いということがわかってきたわけです。そういう理由で、現在は世界的にフェイスリフトは口角の下側のたるみやしわに対しては有効でも法令線をフェイスリフトで解決しないほうがいいという考えが主流になっています。
では他にはどういう方法があるかというと、法令線直下に人工骨、シリコンなどを入れる、脂肪注入、ヒアルロン酸やレディエッセなどの吸収性の物質の注入などが行われるようになっています。参考までにどの部位にも成長因子やPRPと成長因子などは絶対に入れないでください。しこり、痛み、かゆみ、凹凸、変色、膨らみすぎなどの異常な問題が多発していて、この修正ができないというとんでもないことになっています。なぜこのような危険な方法を行うクリニックがまだあるのか不思議です。また人工骨やシリコンは法令線を持ち上げる効果はかなり大きいわけですが、若い間は皮膚に厚みがあるのでいいのですが、将来歳を取ると皮膚が薄くなってきますので、この頃にシリコンや人工骨の段差が目立ってきて、これを除去したり、修正を希望される方が最近多いように思います。特に人工骨は自分の骨と結合してしまうので、この除去というのが簡単ではありません。そういう理由で、現状ではヒアルロン酸、レディエッセなどの吸収性の物質の注入と、脂肪注入が一番安全と考えられているように思います。
ただ皮膚を持ち上げる効果の点では私は脂肪注入のほうが有利と思っています。顔の皮膚にはあちこちにじん帯がついていて、骨から皮膚の表面近くまで木の根っこのようにじん帯という組織が伸びていて、これによって顔の皮膚が直下に脂肪があってもずり落ちない構造になっています。このじん帯の引っ張り強度に強弱があるわけです。実際に法令線にもこの組織があって、じん帯による引っ張りのために皮膚がふくれにくい部分があるわけです。ヒアルロン酸やレディエッセ、あるいは脂肪の注入をしているととても狭い範囲なのですが、ふくれにくい部分があるのがわかります。脂肪注入の場合は注入針がすこしだけ太いので、この抵抗するじん帯部分を注入針ですこしだけ緩めることで皮膚がさらにふくれやすい状態を作ることができます。こういう操作をしながら脂肪の注入を行うことができます。一方ヒアルロン酸やレディエッセの注入針はとても細いので、このじん帯を緩める処理を行うことができません。この状態で無理に注入をすると、ヒアルロン酸やレディエッセがじん帯のためにふくれにくい部分から周囲に流れてしまい、予定していない部分が膨れてしまうようなトラブルが起きることになります。こういうことが起きると凹凸になって仕上がることになるわけです。以上のような理由で、十分なふくらみを得たい場合は、脂肪の注入が一番有効できれいに仕上がるということになると思います。
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どんどん名医になる話
私が最初に形成外科の指導を受けたのは京都大学病院の形成外科に入局した時です。この時のリーダーは冨士森先生という方でした。当時京都大学では、やけどや外傷、皮膚がん、先天奇形などで、顔などの再建を希望される方が日本中からたくさん京都大学に集まってこられていました。手術の結果がとても美しいので、日本中で有名だったからです。当時京都大学形成外科に治療を希望で来院された場合、どなたにも手術は京都大学でお受けしますが、手術予定は大体3年くらい先になりますと伝えなければなりませんでした。それくらい患者さんが多かったのです。
冨士森先生とはその後ずっと付き合いがあり、ごく最近まで学会などでも会うことが多かったわけです。時々食事も一緒にしたりしていたのですが、最近冨士森先生がよく言われていたことは、歳を取るほどどんどん名医になるなあということです。患者さんの経過を何年も長期に見ることが多くなり、いろいろの経験も豊富になっていくわけです。医師になってすぐの頃は手術直後の結果が良ければ、よくできましたというようなところがあるわけですが、たとえば3年後、10年後にどうなるかということは、なかなか若い医師には見えないわけです。せいぜい3か月後の結果が良ければ安心というようなところもあり、特に子供の手術などでは将来成人になった時どういう問題が出てくるかということは、なかなか実感として浮かばないわけです。手術の経過を3か月くらいではなく、何年も長期に見ていたり、同じ患者さんの成長をみていたりすると、3か月後の結果からは予想ができないような変化が起きてくるということもまれにはありうるわけです。
そういう意味で医師となって同じ患者さんをずっと見ているというのは自分へのフィードバックのようなものなのです。学会や論文などで、新しい手術や治療が次々に出てくるわけですが、私自身も冨士森先生が言っておられたように、こういう治療をしてはいけないとか、将来この患者さんはとんでもないことになるなあなどと思ってしまうことがあるわけです。学会でそういう講演を聞いた時は必ずこんな手術はこういう危険があるなどと必ずかみつくことにしています。そうしないとそこで聞いていた他の医師はおそらく同じ手術をしてみようなどと思うわけですから、危険と思われる治療や手術については私はこう考えるという反対意見は必ず述べるようにしています。うるさい医師ということになりますが、全国の患者さんのために自分のコンピューターが止めなければと思う治療や手術は全力で反対と言うようにしています。歳を取るほどどんどん名医になるといういうのは本当にそのとおりだと思います。長年の経験というのは若い医師にはとてもわからないことだと思います。自分が若い時にはたしかにそうでしたから、間違いありません。
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