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論文の審査委員の仕事について
私自身は国際美容外科学会のオフィシャルの医学誌であるAesthetic Plastic Surgery とアメリカ美容外科学会の医学誌のAesthetic Surgery Journal と韓国美容外科学会の医学誌のArchive of Plastic Surgery の3つの医学誌の論文の審査委員をしています。どの医学誌にもチーフエディターの医師がおられて、この編集長が学会に投稿されてきた論文を審査委員に振り分けて、審査を依頼するわけです。いずれの医学誌もかなり世界的に有名な多くの医師が論文の審査の仕事をしています。多くの場合、一つの論文に3-4人の審査委員が担当にあたり、論文として医学誌に採用できるかどうかを判断するわけです。審査委員の仕事はボランティアになっていて、忙しい活動を無料奉仕でおこなっているわけです。すべての医学誌にそれぞれ活動してもらっている論文審査委員の名前が載りますので、その分野のリーダーとして自分の名前が載っていないと世界には認められていないというような感覚になるようなところもあるような気がします。私のところにも、どうしたら、この医学誌の論文審査委員に入れるのか、あるいは審査委員になれるように推薦してもらえないかというような問い合わせや依頼が時々来ます。こういう背景があるのでしょうねえ。
でも仕事はかなり忙しくて、特に国際美容外科学会は1か月の間に1-2編の論文を必ず送ってきますので、特にとても長い論文だったりするとえーっと思ってしまうこともあります。規則上、論文の審査をあまり断ることができません。また審査をひきうけた場合、2週間以内に完全受理、一部書き直し、かなりの部分の書き直し、拒否の4段階の判定を付けて回答することになります。英語ではaccept, need minor rivision, need major revision, rejectとなっているのですが、いずれの場合もたくさんのコメントを書いて返送するというルールになっています。2週間以内と制限のある中で多くのコメントを書くという作業も大変で、時には他の参考文献もたくさん読まないと回答できないようなこともあり、名誉ではあっても忙しい仕事です。本当に世界の審査委員の医師たちは頑張ってるなあと思います。でもこれがその医学誌のレベルを保つために必要なことで、医学の発展のためにもとても大切な仕事と思っています。
投稿者:megaclinic
体の中に成長因子、FGFを入れる問題について
最近の日本美容外科学会(JSAPS)や日本形成外科学会の調査で注入療法で一番合併症の多いものが成長因子、FGFを入れた際のトラブルであることが報告されています。成長因子は本来皮膚の潰瘍や褥瘡などに対して、パウダー状に体表に散布して肉芽を盛り上げて、骨を隠してこの上に植皮が可能な状態を作るなどのために使用されるものです。このメーカーである科研製薬は、成長因子を体内に注射する安全性は確立していないので、そのような使用はしないでくださいとアナウンスをしています。実際には血液豊胸とか、〇〇注射、プレミアムPRPなど、いろいろの名称で血小板などと混ぜて、成長因子を体内に注射をする治療がおこなわれているようです。また一部のクリニックではバストへの脂肪注入に成長因子を混ぜているところもあるようです。成長因子の体内への注入については安全性が確立しておらず、合併症としてはしこり、異常な盛り上がり、凹凸、痛み、皮膚の変色、赤みなど多くのトラブルが報告されていて、問題は治療方法として確実な方法がないということです。要するに成長因子の作用で脂肪が異常にふくらみ、時には激しい炎症を起こしたり、しこりや凹凸ができたり、痛みや変色などが起きるということがわかっています。このコントロールができないということと、何年たっても何かが刺激になって急に膨れてくることもあるわけです。従来ケナコルトの注射を何回も繰り返すとか脂肪溶解注射、ボトックス注射、切除などいろいろの方法が試みられてきましたが、確実に治療ができるという方法が見つかっていません。他に脂肪注入や吸収性の注入物などによる安全な方法がいくつもあるのに、なぜこのような危険な方法で治療をされているのか、私には理解ができません。当院でもこのトラブルに対していろいろの方法を試みてきましたが、最近は当院で開発したニードルサクションという方法を治療として行っています。まだ症例数が多くはないのですが、現状でかなり有望な治療方法と思っています。影響を受けた脂肪を体から出してしまうということが必要と考え、針で抵抗する脂肪を壊して吸引するという方法です。この方法であれば、切除のようにキズが残らないので、安心な方法と思っています。もうすこし多数の治療例を集めていずれ学会に報告する予定です。
投稿者:megaclinic
中国のワイナリー
中国にワイナリーがいくつかあることはあまり知られていません。私も中国でワイナリーにつれてもらうまでそのことを知りませんでした。
中国の形成外科学会や美容外科学会に何度も招待されたことがあり、国際美容外科学会の講習会もあちこちで何度も開催して、教育講演を担当したり、手術指導のためのライブの手術をしたりしていたのですが、時々懇親会で共産党幹部用とか言っていましたが、とてもおいしい赤ワインを飲んだことがあります。
Great Wall と言われるワインの一番上のランクのワインだそうです。中国でほぼ飲まれてなくなるようなので、外国への輸出はしていないそうです。これがかなりのレベルでおいしいのです。一度ウルムチで中国形成外科学会が開催されたことがあり、この時に中国形成外科学会の会長がせっかくウルムチのような遠いところまで講演に来てもらったので、ワイナリーに案内したいと言って車でつれてくれたことがあります。
街を離れて車で4-5時間くらい走ったと思います。途中、ゴビ砂漠を通り、交河故宮という史跡を訪問し、その近くにワイナリーがありました。アメリカやフランスなどのような素敵なワイナリーではなく、ただ広大なブドウ畑があるだけでしたが、ワインの味はなかなかのレベルでした。夏の気温がかなり高いので、独特のブドウの味になるというような説明でした。私の好きなどっしりした濃厚タイプです。中国においしいワインがあって感激です。北京と上海と大連以外での中国での多くの学会の時は、ぬるいビールか、これはお酒なのですかあ?というような不思議な飲み物だったり、臭いが苦手でどうしても飲めませんというようなお酒が出て困ったことが多かったわけです。そんなことを何度も経験していましたので、中国でおいしい本格的な赤ワインが出たりしたら泣き崩れますね。
交河故宮近くのワイナリー
交河故宮
ウルムチでの中国形成外科学会の懇親会
ウルムチでの中国形成外科学会で。左から国際形成外科学会会長マリタアイゼンマンクライン(ドイツ)、米国形成外科学会会長ブライアンキニー、中国形成外科学会会長イーリンサオ、院長。
ゴビ砂漠
ワイナリー
投稿者:megaclinic
ニードルサクション
ニードルサクションは当院で開発した治療方法です。たとえば脂肪注入で生着して膨れ過ぎた脂肪の除去やしこりによる凹凸の修正、あるいは成長因子を入れたために膨れ過ぎたり、しこりになったりした脂肪の除去、修正をするために、針で生着して膨れ過ぎた脂肪やしこりを壊せば吸引できることがわかりました。一度しこりになったり、脂肪注入で生着した脂肪は、通常の脂肪吸引では全く除去できません。また切除ということになると、切開によるキズが残ってしまい、さらにしこりを切除後にへこんでしまったり、段差や凹凸ができるということもよくあるトラブルになっています。その点針穴のあとも残らず、新しいキズも残らないで平坦に吸引ができるこの方法は利点が多いと思います。ただ一度で大量の吸引はできませんので、3か月ほど待って仕上がりがさらに吸引のいる状態であれば、再度ニードルサクションを繰り返す必要があります。もし、このようなことがあっても最終的には、この方法でご希望の減量やしこりによる凹凸の修正が可能になっています。最近この方法に関するお問い合わせがかなり多いので、名称をつけたほうが説明が簡単と考え、ニードルサクションという名称にした次第です。
投稿者:megaclinic
ギリシャ、ミコノス島
コロナの問題があり、旅行にも行けないですよねえ。特に海外はもう長い間行くことができず、国際学会などもオンラインで発表などをやっています。こういう場合、外国の現地の開催時間に合わせる必要があり、日本にいると深夜にスタンバイなどになることもあり、つらいことが多すぎます。毎日寒いので、特に暖かいところやきれいな海の景色などを思い出して、はあーっとかため息の毎日です。みなさんもたまってますよねえ。友人とも会いたいし、旅行にも行きたいし…。騒げないですもんね。
海と言うと世界の海で大好きなところがあります。何と言っても美しい海はメキシコのユカタン半島から見るメキシカンカリブとギリシャのエーゲ海と思います。エーゲ海を楽しむなら絶対にギリシャの島がいいですよねえ。国際美容外科学会で、よくギリシャの島を会場にして講習会がありましたので、あちこちの島には行っています。一番気に入っているのがサントリーニとミコノスです。ミコノス島は特に空港から離れて奥のほうに行くとあまり人もいなくて、景色の素晴らしいところが多いように思います。サントリーニは白い建物と水色の屋根が有名な景色ですが、ミコノスは風車のある景色が優雅で美しいですねえ。エーゲ海はただただ深い紺色が美しい海です。はるか遠くから海を渡ってくる風の中で、キラキラ輝く海面を見ていると朝から夕方まで次々に海の表情が変わっていくのでいつまでたっても見飽きることがありません。寒い毎日ですが、混んでいる電車の中などで、ぼーっとミコノスの景色を思い出したりしているわけです。時々降りる駅を忘れかけていて、あー大阪にいるんだったーと危ないことがあります。
投稿者:megaclinic
脂肪注入で膨れ過ぎた場合
最近脂肪注入で生着した脂肪が多すぎて修正したいという相談がかなり多いので、ここですこしまとめてお話ししておきたいと思います。脂肪注入を行う場合、まず局所麻酔で何cc入れるときれいな仕上がりになるかという量を測定しておきます。脂肪注入の生着率は患者さん本人の健康状態や部位や後の管理などでかなりの差が出ることがあり、当院でのデータでは大体7割から9割程度の生着率になっていると思います。たとえばタバコを吸うような方や糖尿病、貧血などの病気のある方や、注入部位の1か月程度の安静が保てない方は生着率が低くなります。患者さんの状態によって、この測定量の10-20%多めの脂肪の注入を行っています。注入から3か月程度待ってから追加の注入が必要であれば、再度脂肪注入を行うという方針が楽で確実にご希望のラインを得るための方法と思っています。当院での手術ではこういう方法により入れすぎというようなトラブルはほとんど経験しません。
当院に修正を求めて来院される方は注入量が多すぎて希望の顔ではない仕上がりになったとか、しこりができて凹凸が目立つなどの悩みで来られています。これらについては当院で開発した方法、つまり針で生着した脂肪やしこりを壊して吸引できる状態にしながら脂肪吸引と同じ方法で減量することができるようになっています。脂肪注入で生着した脂肪は通常の脂肪吸引では全く吸引ができないくらいの状態になっているのですが、針で壊せば吸引で脂肪が出てきます。ただこの量が大量には出て来ないので、3か月後くらいにこの手術を繰り返す必要があるかもしれません。これで再度減量ができることになり、最終的には目的とした平坦で希望された顔のラインに仕上げることができます。いずれ学会や論文でこの技術を発表する予定ですが、今の段階ではまだ公表していない技術なので、一般的にはまだ知られていない技術になっています。また学会発表や論文発表の場合、技術的には多少難しい手技なので、ビデオを作成して公表したいと考えています。そのためのビデオ作製に協力していただける患者さんも募集しています。もしご協力いただける方があれば、ぜひお知らせいただけると助かります。なお、ビデオについては世界の美容外科医が見ることになりますが、一般には公開されることはありません。なお、私の開発したこの方法についてお問い合わせがかなり多いので、毎回針で壊して吸引を行う方法などのような説明をするのが大変なので、この方法の名称として「ニードルサクション」という名前にしたいと思います。針で吸引のそのままの訳になります。
投稿者:megaclinic
成長因子のトラブルの治療法について
成長因子入りのPRPの注射などの方法を行っているクリニックがありますが、成長因子はトラブルが起きることが多く、問題が起きた場合確実にこれをなおす治療方法がありませんでした。私のクリニックでの最近の経験ですが、かなり期待できる可能性のある方法を行っています。もともと液体を注射で入れているわけなので、顔の中である程度の拡散があります。したがってどういう方法であっても入れた成長因子をすべて回収するようなことは不可能です。ただ成長因子により脂肪の増大が起きるということが一番の問題点であることはかなり確実な話で、成長因子の影響を強く受けて硬くなったりしこりになった増大脂肪を針で壊して吸引することによりかなり減量ができるということがわかってきました。この針で増大した脂肪を壊すことにより変化した脂肪と中に含まれている成長因子の両方を吸引して体外に出すことができるようになりました。ただ今のところ3人くらいの治験が得られているというだけですし、一度にしこりをすべて壊すようなことができないので、1ー3か月ほどあけてから再度この針で壊して吸引する方法を繰り返す必要があることが多いと思います。また今の段階では長期フォローの結果がわかりませんし、もっと多数の患者さんの治療を検討して、長期的にいい結果が得られるようなら学会に新しい治療方法として報告し、論文としても発表したいと思っています。
投稿者:megaclinic
南アフリカ、スピアワイナリー
南アフリカで国際美容外科学会の講習会(コース)が開催されたことが何回かあります。一度はケープタウンから車で1時間ほどかかるワイナリーで開催されました。もちろんケープタウン市内での開催でもよかったのですが、南アフリカの形成外科学会の会長の意見で、ケープタウン市内は治安が悪いので、万一世界から20人ほど集まる講師陣が事故や犯罪にあうようなことがあっては困るということで、市内から車で1時間ほど離れたスピアワイナリーの中で行われたことがあります。これだけ市内から離れているとワイナリー内は安全で、参加者の安全第一という理由でこのワイナリーが開催地として選ばれたわけです。この時は私がプログラムを作るところから担当して、世界から20人ほどの講師の医師の選任も私とISAPS の教育委員会のチェアの二人で担当しました。このコースは3日間の手術の指導コースでしたが、南アフリカの形成外科医、美容外科医の8割くらいの医師が参加したというすごい盛り上がりでした。
ワイナリーはテーブルマウンテンのふもとにある広大な敷地で、ホテルの部屋はそれぞれコテージで分かれていて、ワイナリー内にプールが3つ、学会会場のほか劇場や4つのレストランもありました。さらに敷地内には小さい動物園のようなところがあって、ここでは珍しい鳥、チータなどが飼われていました。特にチータは希望者は中に入ってボールを投げたり、なでたり、一緒に遊べるようになっていたのですが、中に入るには人数制限もあったので、ついに一度もチータに触ることができませんでした。ワインはおいしくて楽しかったのですが、チータと遊べなかったのが唯一心残りになっています。あ、もう一つ、アフリカンバッフェというジャングルの中のレストランのようなところがあって、ここでは何種類もの肉が食べられたのですが、いくつか何度聞いても何の肉かわからない硬い肉があったのをよく覚えています。一体何を食べたのでしょう?
ワイナリーのホテルの各部屋はコテージになって分かれています。
チーターの散歩タイム
投稿者:megaclinic
二重のラインの幅、形の変更について
二重まぶたの手術を受けた後で、仕上がりに左右差があったり、予定していた幅と異なってしまったとか、形が気に入らないなどで修正を希望して診察に来られる患者さんも多いように思います。以前の手術が埋没法であれば、修正は切開法でかなり自由にご希望の二重にすることができます。まれに埋没法で修正を希望される方がありますが、埋没法では以前のラインを消す処理を入れることができないので、修正ができないことが多いと思います。
以前の手術が切開法であった場合は、修正は必ず切開法で行います。まぶたの皮膚に余裕があれば幅については1、5ミリから2ミリ程度であれば、切開線を移動させることができ、新しい幅と形のラインを切開線と一致した二重のラインに仕上げることができます。以前の手術でかなりの幅の皮膚切除が行われているような場合は、それ以上皮膚を切除することができないことがあり、このような場合は切開線を2本にして、ご希望のラインにする必要があるかもしれません。この場合、以前のキズが目立ってしまうことがあり、肌質をよく検討して、目を閉じた時に2本のキズが見えてしまうようでは修正を慎重に考える必要があります。肌質がよければまぶたのキズはほとんどわからないくらいになることもありますので、こういう場合は2本の切開線があっても問題がないということになります。二重の幅の変更の際には基本的に新しいラインのすぐ上にある程度の厚みのある脂肪が必要で、これがないと三重になったり、切開線と二重のラインがずれてしまうようなトラブルもあるわけです。まぶたの中の脂肪の上下方向の移動が必要になることが多いわけですが、特にラインの幅を狭くするようなケースでは、この移動が難しいこともあって、このような状況があれば、わきなどから微量の脂肪移植が必要になることもあります。
投稿者:megaclinic
安全な脂肪吸引について
最近の日本美容外科学会の合併症の報告を見ていると、脂肪吸引の事故がとても多いような気がします。まず医師が解剖をしっかり頭に叩き込んでいる必要があります。たとえば腹部であれば、皮下に何があるか全く知らない医師が脂肪吸引を行うようなことはあってはならないことです。どの層に腹膜があって、その膜のすぐ下には腸があるなどのことはわかっていないとだめです。腹膜に損傷が起きるというようなことはとても怖い事故になります。腹膜の損傷を防ぐための基本操作は熟知している必要があります。また脂肪吸引量についても体重や、貧血の有無、出血傾向の有無などを検討して、安全な吸引の限界量を設定しておく必要があります。大体の目安として脂肪の吸引量の30-40%は翌日までに出血量として失われる血液として頭に入れて手術を行う必要があります。たとえば脂肪の吸引量が2000ccであれば、翌日までに多ければ800ccくらいの出血が起きる可能性があるわけです。患者さん自身としては、せっかく手術をするのだからついでにここも吸引したいなどの希望で、危険な吸引量に至るようなことはさけなければいけません。また手術により血液が失われることになるので、輸液も必ず必要になります。吸引で出てくるのは脂肪だけではありません。同時に血液も出てくるわけです。失われる血液の補充として輸液も必要になります。点滴もしないで脂肪吸引を行うようなことはとても危険なことです。どうしても大量の吸引が必要な場合は一度にあれもこれもするのではなく、3か月程度あけてから2回目の脂肪吸引を受けるなどのほうがずっと安全です。
投稿者:megaclinic