万博に行ってきました。
大阪で万博を開催中ですよね。せっかくなので一日行ってきました。万博の前評判はあまりよくなかったのですが、最近は入場者数がかなり増加しているみたいです。実際に行ってみると本当にすごい人で、ディズニーランドやUSJと変わらないくらいです。私自身がどうしても見たかったのは赤十字のパビリオンです。以前に大阪赤十字病院の形成外科で3年間ほど働いていたことがあり、大阪日赤からガザ地区に派遣されていた看護師さんの話や日本の震災の際に活躍した看護師さんの話なども入っているということだったので、ぜひと思って行ってきました。
万博では世界のいろいろの国のパビリオンがあるわけですが、行ったことがない国はとてもおもしろいと思います。私自身もアゼルバイジャンとか、サウジアラビアなどは行ったことがないので、これらのパビリオンは実情を知らないことが多かったので、なかなか楽しかったです。
でも過去に何度も行ったことがある国のパビリオンはほとんど内容もよく知っていることですし、そのパビリオンでの食事なども何度も食べたことがあると、特に目新しいこともないので、、、という感じになりますよね。でも夜まで残っていると、水とレーザーのショーがあったり、夜景はあちこちとてもきれいで、これはこれでなかなか楽しいです。
今回一番感動したのはやはり赤十字のパビリオンでした。日赤の人たちが多数中にもおられて、自分が大阪赤十字病院で働いていた頃を思い出してしまいました。特に今も世界で戦争が続いていて、ガザで活動されていた看護師さんの話は私たちの経験したことのない悲惨なものでした。特にいっしょに働いていた医師のところに死亡した子どもが運ばれてきて、その子がその医師の子どもだったなどの話は聞いていてつらいものでした。こういうところで命がけで働いている日赤の看護師さんがおられるというのはたしかに赤十字の精神ではありますが、本当にすごいことだと思います。
もともと赤十字という組織は、本来戦争や震災などを前提にしている組織です。日赤の中で働いているとこのことがよく理解できます。たとえば、看護師さんが将来病院の幹部になるためには、候補生の看護師さんを東京に集めて、1年間の研修があります。この研修では、とにかく英語で会話ができる練習をさせられるそうです。また世界のいろいろの宗教のことも学ぶのだそうです。看護師さんとしての業務のトレーニングなどは一切なくて、いろいろの本を読まされて、グループディスカッションもかなり行われるそうです。基本的に叩き込まれることはたとえ敵の国の兵士であっても助けなさいということ、自分の上司、あるいは政府からの指示であっても医療者としておかしいと思うことは従わず、自分が医療者として正しいと思うことは自分についているスタッフのナースたちに自分で指示をして医療者として全力をつくしなさいということなのだそうです。戦争では情報がコントロールされてしまうこともあり、いつも正しい報道がされるわけではないということを理解して、医療に従事する者として、何が正しいか自分で考えて判断して行動を起こすという力をつけるための研修なのだそうです。東京に集められた幹部候補生の看護師さんたちはここで大体半数くらいが脱落して、もとの病院に返されるのだそうです。この1年間の研修を終了して戻ってきた看護師さんは、どの人もなにかが起きれば、やる時はやるという根性のある看護師さんに成長しているわけです。ある意味すごい人が誕生するわけですが、日赤の精神として戦争を前提にしているので、まあそういうことになりますよね。
皆様ももし万博に行かれることがあれば、ぜひ赤十字のパビリオンは訪問していただきたいです。私はまたここで泣いてしまいました。パビリオンを出る時はここで仕事をしている日赤のスタッフの方々に拍手をして涙目でパビリオンを後にしました。今さらですが、もっと大阪赤十字病院で働いていてもよかったかもしれません。当時京都大学形成外科の教授から九州の小倉記念病院に赴任の命令がなかったら、私の人生はどんなことになっていたのでしょう?今さら後戻りはできませんけどねえ。