宮本武蔵:五輪の書
正しくは宮本武蔵の五輪書と書くようですが、読む時は五輪の書と読むそうです。この本は剣豪宮本武蔵が晩年に剣術の奥義をまとめた本だそうです。生涯60回試合をして一度も負けなかった人の書いた本というのはとても興味があります。負ければ死ぬという時代の試合なので、すごい記録ですよね。私自身は何度もここで言っていますが、京都大学医学部ソフトテニス部のヘッドコーチをしています。この本はテニスの指導書としても、なかなか奥の深い教科書になるので、毎年京都大学医学部ソフトテニス部の部員の皆さんには、この本をテニスの教科書として読んでおくように言っています。実際のところ部員はあまり読んでないみたいで残念なのですが、、。この本の太刀、つまり刀をラケットと置き換えて読むとテニスのすごい本になります。
私自身はかつてテニスとは関係なく、この本に興味があり、3回読み返しました。命をかけて戦う試合というのは本当は堂々と戦うのではなく、最後まで絶対にあきらめず、利用できるものはなんでも使うというすごいものだなあと感心します。太刀を払い落された時にもあきらめす、相手に組みついて、相手の太刀を奪え、抱き着いてしまえば相手は切ることができないなど、勝負にかける執念のすさまじさが伝わります。
テニスにも使える教科書と思ったのは、実は私が大学を卒業後に、何年も明井さんご夫妻というテニスの名選手にうちのクラブの指導をお願いしてきてもらっていた頃からそう思うようになりました。ご主人は同志社大学在学中に団体戦と個人戦の両方で、大学日本一になられた方です。奥様の方はもっと有名な方で、中学、高校、大学、社会人のすべてで全日本チャンピオンになられた方です。また奥様は皇后杯を2回取っておられて、最初の皇后杯は高校生の時に取られたそうです。これはたしか日本で初めてのすごい出来事だったそうです。お二人とも日本のナショナルチームを指導されたこともあり、日本でソフトテニスをしている人ならだれでも知っているという有名なご夫妻です。私自身よく知っている方々なので、京都大学医学部ソフトテニス部の指導にたびたびきてもらっていました。ついでに私自身もご主人にはよく怒られていました。よく一緒に試合もやらせてもらいましたが、ご主人の方はとても厳しい方で、「高柳さん、コーチのくせにこんなプレーをしていたら、あきまへんがな、、、」みたいな調子です。全日本のナショナルチームの女子選手を何人も泣かせたこともあるとか、、、。この明井ご主人の言葉が、宮本武蔵の五輪の書に出てくる言葉と同じことがよくあったのです。勝負というのはどこかで同じ原理なのでしょうか?何度も不思議なことだなあと思っていました。最後のころは明井さんが宮本武蔵に見えた時もあります。たびたび重なっていた言葉:一度試みてだめだった攻めであっても、もう一度は試してもよい、ただ2回試みてだめな攻めは3回してはいけない。攻めのペースを突然変えるのは有効なことがある。ゆっくり動くと見せて突然切りかかる。日光や雨、風が利用できるときはこれを使え。相手を見ている眼で、同時に周囲を見ること。(明井さんはボールを見ながら、相手コートの選手の位置と動きを見るようにと指導されました)。自分の呼吸で試合を進める、相手の呼吸に合わせない。太刀を持ちては必ず相手を切ると思え。(明井さんはラケットを持ったら、絶対に勝つと思え。)いろいろ似ていませんか?勝負になかなか負けない人ってどこか似てるんですね。