美容外科医としてすぐにやめてほしい手術と治療
私のクリニックには他院での修整を求めて来院される方もたくさんおられます。このような患者さんを見ていると、本当にこのような手術や治療はすぐにやめてほしいというものがいくつかあります。本当に気の毒なことになっている方も多くおられて、簡単に修正ができないことも多いわけです。日本美容外科学会(JSAPS)や日本形成外科学会などの調査でも多くのトラブルの報告がありますが、この中でも多いトラブルが私のクリニックでも悩んで来院される患者さんの傾向と一致しています。
とにかく多いトラブルとしては、成長因子(fgf)を入れた注入物、糸のリフト、金の糸です。成長因子はメーカーが安全ではないので体内に注射で入れないでくださいとアナウンスしているもので、この注射により脂肪が異常に膨れてきます。また激しい炎症が起きることも多く、その結果、異常なふくらみ、凹凸、しこり、痛み、赤み、変色などのトラブルが多発しています。痛みや腫れなどについてはステロイドの注射で1カ月くらいはおさまることがありますが、これで完治することはありません。また減量のためには切除、ニードルサクションなどしか方法がありませんが、これでも一度の手術で完璧に仕上がらないことも多いように思います。複数回の手術がいることが多くなっています。それくらい難しい治療になっています。
糸のリフトは切開するフェイスリフトより効果が少なくても安全とか、切らない分キズの心配がない、あるいはダウンタイムが短いなどのように思われるかもしれません。でも現実はそうではなく、凹凸ができたり、感染が起きた時に糸の除去のためには皮膚表面を切開する必要があり、そのためのキズが残るとか、痛みが出たり、一時的にきれいになっても、大きく口を開けた時に痛みが出たり、腫れてきたり、違和感がずっと続いてつらいなど、多くの問題が出ています。私自身はこの糸リフトは効果があまりに少なく、持続も長くもっても1年程度、感染が起きた際に糸の除去のためには多数の切開がいること、歳をとってから表情にひきつれや凹凸などが出てくることがあることなどから、最初からこの方法は安全ではないと思っていますので、私のクリニックでは糸リフトをしていません。
また金の糸も多くの問題が出ています。純金と言っていても、100%純粋の金というのは世の中にありません。必ず不純物が入っています。また以前言われていたように金の糸を埋め込むことで皮膚の若返り、肌質の改善などの効果が学問的に認められないこと、さらに不純物が体内で溶けて拡散するという問題、この不純物により肉芽種、しこり、痛み、しびれ、硬化、壊死、石灰化、神経障害、眼の周囲ではドライアイ、まぶたの皮膚の硬化により眼があけにくい、閉じにくい、などいろいろの症状が報告されています。また金の糸の除去のためには顔のどこかを切開して糸を探す必要があり、この手術そのものがとても難しい手術になっています。
以上が私がすぐにでもやめてほしい手術や治療です。すでに学会や日本美容医療協会などからはこれらの安全性に疑問があると報告されていますが、一部の美容外科医は今でもこういう危険な手術や治療と続けておられます。他にも同じ効果が得られる安全な方法がいくつもありますので、こういう危険な方法、あるいは合併症が起きた時に簡単に治療ができないような治療はやってほしくないなあと個人的には強く思っています。