時代に逆行する乳がんの乳房再建
乳がんの乳房再建は形成外科の診療の中でも大きい分野になるわけですが、この再建方法は大きく分けて二つの方法があります。人工乳房を使用する方法と自家組織を移植する方法です。最近はこの併用という方法も増えてきたわけですが、、。人工乳房を使用する方法は、日本では従来アラガン社の人工乳房と組織拡張器(エクスパンダー)のみが国の認可をとって、保険診療で使えていました。ところがアラガン社の人工乳房によりガンが出現した方が世界中ですこしずつ出てきて、ついに日本でも患者さんが一人出たために、厚生労働省はアラガン社の人工乳房と組織拡張器による乳房再建の保険診療を取り消しました。その後新しい人工乳房が認可されましたが、現在組織拡張器の表面の形状は平坦なスムーズタイプと言われるものしかありません。一方人工乳房は丸い形状の表面の平坦なスムーズタイプと、アナトミカルタイプと言われるバッグの上のほうが平坦で、下ほど膨れて大きくなる表面のザラザラしたタイプ(テクスチャードタイプ)の二つが認可されています。問題は組織拡張器でできる内部の膜(カプセル)の表面がツルツルした状態になるため、組織拡張器とバッグとの入れ替えをした後、バッグが中でかなり自由に動いてしまうために、再建した乳房が意図して形にならないことがよく起きることになっています。これは何十年か前に世界中で乳房再建を行う医師たちがこのトラブルに悩んでいたころと同じことを世界中で経験しているわけです。いろいろ世界中で再建方法を検討した結果、テクスチャードタイプのエクスパンダーとバッグを使用するのが一番結果がいいとたどり着いたはずなのに、今はこの方法が保険診療で行えないことになっています。あきらかに乳がんの乳房再建の方法が前進していないと思っています。