傷がきれいになる方法
形成外科や美容外科では傷をきれいに治すということが大切なテクニックの一つになります。単純に切開した傷がほとんどわからないくらいのきれいな結果になるか、あるいはとても目立つキズになってしまうかということは、医師の技術、術後管理についての医師の知識、傷の方向、運動の影響を受けるかどうか、肌質、もとの肌の色調、タバコを吸うかどうか、糖尿病など傷の治りに影響する病気がないか、などによってかなりの差が出ることになります。
医師の技術としては十分な形成外科のトレーニングを受けたかどうかが経験として大切なことだと思います。傷に緊張がかからないような縫合方法があり、この技術や知識があるかどうかは仕上がりに差が出ます。また手術後に体の動きや顔の表情などで影響が出ない傷に仕上げているかどうかも大事なことです。たとえば額や首や腹部の水平方向の傷は長い傷であってもきれいに治ります。一方、額や首や腹部に縦方向に長い傷があると、これはケロイドのように必ず盛り上がってしまいます。額や首や腹部が上下方向に伸びたり、縮んだりする時に、縦方向の傷が伸縮できないので、傷にひきつりによる炎症が起こることになります。その結果数ヶ月で傷がケロイドのように盛り上がるわけです。これはケロイド体質ではありません。たとえばジグザグの形になるように傷を縫合しておくと、傷全体として伸縮できる傷になるので、きれいに仕上がります。傷に体や顔の動きなどが影響を与えないような状態に仕上げることも大切です。
また肌質や肌の色調はかなり仕上がりに影響があります。たとえば白人の傷はほとんどわからないくらいにきれいになります。額のシワを取るのに、眉の上で大きく横方向に皮膚を切除している手術をアメリカで見たことがありますが、これが時間がたてば、わからないくらいにきれいになるのです。東洋人ではこの方法はかなり危険です。ほとんどの方で長い傷が見えてしまうことになります。同じように日本人でも傷がほとんどわからないくらいにきれいになる方があります。肌の色がすごく白い方、赤ら顔の方、脂性の方などです。反対に乾燥肌で浅黒い肌の方は傷が目立つ傾向があります。特にアトピーのある方や喘息のある方、あるいはその家系の方などは傷が目立つ傾向が強いのです。
手術前に自分で予想できることがあります。もし体のどこかに古い傷があれば、その傷の状態を見てください。白く脱色していたり、色素沈着が目立ったり、もりあがってケロイド状になっていたりすると、体のほかの部位の傷も同じような運命をたどります。傷が体のどこにもない場合は、肘の内側の色をみてください。正常の肌は腕全体と肘の内側は同じ色調です。傷が目立ちやすい方は肘の内側だけ色が黒ずんでいるなどの特徴があります。この部位は汗でむれやすい部分なのですが、これだけのことで色素沈着が起きる方は体のどこかに傷ができれば同じように傷の炎症が強く起きて、そのための炎症後の色素沈着が残るということになります。
こういう危ない肌である場合、手術をしてその傷が目立たないように手術後の努力が必要になります。そのため、軟膏を使ったり、内服薬を使ったり、テーピング固定やピタシートやレストンなどでの圧迫固定、場合によっては後日レーザー治療、キズへのステロイド注射を繰り返すなどの方法が取られる場合があります。これは状態によって医師がベストの方法を選択する必要があります。