何かを得て、何かを失うということについて
時々学会などで経験することなのですが、美容外科や形成外科の手術で、何かを得ようとして、何かを失っているということがあります。たとえば、乳がんの乳房再建の方法の中には背中の広背筋という大きい筋肉とその上にある皮膚、脂肪を利用して片方のバストを再建するという方法があります。乳がんでは片方のバストがなくなるか、かなり小さくなって変形として残るということがあるわけです。ある外科医などは命が助かったんだから、バストの左右の非対称くらいなあ、、って言われると、私は馬鹿かと思うわけです。女性にとっては大問題ですよね。いくつもある再建方法でこの広背筋を使う方法は広背筋皮弁と言われていて、これでバストが左右対象に再建されたとしても後ろを向いてもらうと、背中は明らかな非対称が残っているのです。片方が凹んでいるというか歪んでしまうのです。ご本人もいすなどにもたれかかると片方の背中の骨だけが当たったりして気持ち悪いとか、片方の背中が寒いことがあるなど、いろいろ問題があるわけです。
私たち形成外科医や美容外科医は体の左右非対称という問題もよく修正してきたのではなかったのか?と思ってしまいます。そういう理由で私はいくつもある乳房の再建方法でこの方法だけは嫌いなのです。あまりしたくないと思っています。
またたとえば顔の脂肪注入、あるいは最近の再生医療などで脂肪を採取することがあります。この時に採取部に異常な凹みや凹凸、あるいは左右非対称などを残してこれを平気な顔で学会で発表しているような医師もおられます。全くどういう神経なのでしょうね。そういう発表を見ると、私はいつもこういう手術をして、あなたが作った変形のために患者さんは悩んでいませんか?こういう手術を形成外科医や美容外科医はしてはいけませんときついことを言って噛み付いています。たとえ相手が大学教授などであっても馬鹿呼ばわりを平気でしてしまうので、だから私は一部の医師からは嫌われるのかなあと思ったりしているわけです。でもこういう講演を若い医師が会場でたくさん聞いているわけですから、こういう手術をしてはいけないということを学んでほしいですよね。全て私たちの患者さんの笑顔のためになることだと思いますので、気に食わない発表は必ず噛み付くことにしています。
ここだけの話、私とはある時から一切口を聞かなくなったある大学の形成外科の教授がおられます。彼のあの時の講演に私が噛みついてからなんですよね。でかい顔をしておられますが、、、基本的に小さい方なんだから、ま、いいですか。