こわい美容外科クリニックの話、その2
もう一つ私の記憶に残っている話があります。これは当院が移転する前のビルで起きた8年ほど前の実話です。私のクリニックはそのビルの2階にありました。ある時ビルのオーナーからそのビルの4階に新しく、多分皮膚科のクリニックが入るというような話がありました。しばらくしてクリニックが開業されたのですが、そのクリニックにはいくつもの名前がついていました。日米医学レーザー研究所、〇〇コンタクトレンズ、〇〇皮膚科美容外科、〇〇内科などなど、それぞれ名前が違っているので、どういう形態で開業されるのだろうと思っていました。全く行き来があるわけではなく、そのクリニックからの挨拶もありませんでしたので、内容については全く知りませんでした。ある日、そのクリニックのスタッフという方が突然入ってこられて、麻酔の薬がないので、貸してもらえないかということでした。麻酔薬がなければ困っておられるのだろうと思い、何本も貸し出しました。ところがその後何か月も返却がないのです。おかしいと思ってそのクリニックに行って話をしましたが、院長がいないとか事務長も不在でわからないなどの話でした。でもこれは対応として変だと思ったので、返却がない以上、これは犯罪になりますよ。すぐ警察に連絡しますと言って自分のクリニックにもどりました。その後10分くらいでスタッフという方が麻酔剤の返却に来られました。この時に警察が入ると困るようなクリニックなのではないかと疑問に思ったわけです。
その後当院に九州から通院されている患者さんが、4階のスタッフや白衣を着ている人たちのことを言っておられたのですが、ビルの中のエレベーターで会った彼らは以前博多で問題のあったクリニックにおられた人たちですと話してくれました。たくさんの予約金や契約金をとって、突然クリニックを閉院して全員が行方不明になった事件の人がここにいるということでした。
さらにビルのオーナーが家賃がかなり滞納になっているが、このクリニックの情報を知らないかとか、レーザーを売った会社や薬屋さんからレーザーや薬の代金の支払いがないのだが、このクリニックは大丈夫でしょうか?などおかしな話が入ってきました。そのうち突然クリニックは閉院になって、誰も連絡先が分からず、警察も来て捜査が始まりました。またそのクリニックの患者さんが何人も私のクリニックに来られて、皆さん脱毛やボトックス、エステなど最初は高額の契約金になるが、先々10年は何回通院しても無料とか、高額の契約をされている方ばかりでした。突然クリニックを閉めて、行方不明になり、おそらく同じスタッフで、日本のどこかにまた新しいクリニックを作って同じようなことをされているような気がします。そのクリニックで自分で知らない間に開院届を出されて、院長になっていたという大学病院のアルバイトの医師も真っ青になって私のクリニックにも相談に来られました。医師も患者さんも薬屋さんもレーザーの会社もビルのオーナも犠牲になっていたという話です。