口角の引き上げかた
口角が下がるのはなんとなく加齢による変化がわかってしまっていやですよね。この悩みも意外に多いものです。今回のコロンビアでの学会でこの問題に対する治療についてのディスカッションがあって、興味深く聞いていました。いくつかは私が従来行っている方法でいい結果が得られるのは知っています。ただアメリカの医師の報告していた新しい方法もなかなか面白かったです。口角の動きをかなり細かく分類して検討されていました。口角の位置は口の周囲にある口輪筋という筋肉、口角下制筋という口角を下げる時に作用する筋肉、さらに笑筋と言われる主に笑う時に働く筋肉のバランスで決まっています。
これらのいずれの処理を行っても、口角の位置を多少移動することができます。従来口角下制筋の切断という方法がありますし、この筋肉の作用を止めるためのボトックスの治療も確立しています。また笑筋の引き上げという方法はフェイスリフトの際に併用することができます。この方法は私も時々行ってきた方法なので、いい結果が得られることも経験上よく知っています。今回の学会ですこしおもしろかったのは、口輪筋の処理についてです。これは人中短縮の際に併用して行うというものですが、白人では皮膚が伸びやすいので、この手術はやりやすいのかもしれません。口輪筋が加齢によってどのように変化するかを研究されていて、それが若いころの位置に戻るような短縮方法を発表されていました。このほうが機能的には正しいのではないかと思ったりして聞いていました。ただ東洋人と白人は皮膚の伸展性や傷あとの治り方などが全く異なっていますので、この方法が白人ではとてもいい結果になっても、日本人にそのまま適応していいのかどうかはもうすこし検討もいりますし再評価も必要かもしれません。さらに白人では人中短縮の際に口がへの字になってしまうような変形を防止するために切開をさらに法令線側に延長するようなことはよく行われていますが、この部分の傷は日本人では目立つことになり、ここを切開できないという問題が東洋人での人中短縮の限界のように思います。この切開が可能であれば、さらに口輪筋の処理の併用がかなり簡単にできるのですが、東洋人では皮膚が伸びない方が多いので、通常の日本人のための人中短縮の切開から口輪筋の処理を併用して行えるかどうかはさらに検討がいりそうです。ただフェイスリフトの時であれば、皮下の剥離を広くすることでこの処理の併用が可能なので、今後フェイスリフトの際に口角の引き上げが必要なケースではこの新しい方法も検討したいと思っています。