静脈麻酔について
手術のためには麻酔を行うわけですが、この麻酔方法にはいくつかのタイプがあります。一番簡単な方法は局所麻酔という方法です。意識があるままの状態で、キシロカインという麻酔剤を手術部位に注射して痛みがない状態にしてから手術をする方法です。歯医者さんなどの治療はほとんどこの方法と思います。一方骨の手術や広い範囲の手術などの場合は、全身麻酔という方法が行われます。麻酔医が挿管と言ってチューブを気管支まで挿入して気道を確保して、呼吸を管理しながら患者さんの意識のない状態を作って、この間に手術を終了する方法です。この二つのタイプの麻酔方法の中間的な方法に静脈麻酔を併用した局所麻酔という方法があります。この方法は点滴を取って、ここから患者さんが寝るような薬を入れて、患者さんが完全に寝てから局所麻酔を行うことで、患者さんが全く痛みを感じることのない快適な手術を行うという方法です。全身麻酔より使用する薬が軽いものですむので、手術終了後1時間程度休んでもらって、帰宅してもらうことができます。
私自身京都大学を卒業後に京大病院の麻酔科で研修医として勤務して経験を積んでいますが、この静脈麻酔という方法は麻酔科の経験のある医師にとってはとても簡単で安全な方法と思います。意識のあるままの局所麻酔は麻酔の注射の時だけ痛みに耐えてもらう必要があります。でも静脈麻酔を併用すれば、痛みがない上に、上手に麻酔をすれば、7割くらいの患者さんは楽しい夢を見ておられます。この間に本当は痛いはずの局所麻酔をしているわけですが、ご本人はそのことがわからないですむわけです。この夢のタイプについてはとても面白いことに空を飛んだり、宇宙旅行に行ったり、ジェットコースターに乗っているような夢をみるか、きれいな色が出てくる世界にいるような夢が多いようです。もちろんなにも覚えていないという方もあるわけですが、私のクリニックでの経験からは大体7割くらいの方はとても楽しい夢を見ておられるようです。