マリオゴンザレスウリョアの講習会
もう亡くなられてしまったのですが、メキシコにマリオゴンザレスウリョアという世界的に有名な美容外科医がおられました。この医師の手術の美しさは本当に有名で、今なら言ってもいいと思いますので、ここだけの話ですが、彼の患者さんで、手術後にミスインターナショナルになられた女性もあるそうです。たしか鼻と顎の手術をされたとか。とにかく鼻、骨切り、バストの手術では定評があり、彼は1年に1-2回彼のクリニックで講習会を開催していました。毎回世界中から20人くらい医師が参加して、この講習会で勉強されていました。
私も以前一度だけメキシコシティーで行われていたこの1週間に及ぶ講習会に参加して勉強したことがあります。毎日午前中は彼の講義と、午後は彼の手術を実際にみせてもらって勉強するというスタイルでした。毎日朝一番にすることは顔の骨の正面と横顔の絵をうまく描くという練習で、これは正確さを求められたので、それなりに苦痛を感じていた勉強でした。いろいろ記憶に残っていることがありますが、全体を通して、一人の外科医の話というより、芸術家の話をずっと聞いているという感じの講義で、わざわざ遠いメキシコまで彼の話を聞きに行って、同じ医師としてこの差は何だろうと思っていました。いろいろ感動的な話がありましたが、特に印象に残っていることは、顔全体のやけどをした場合、植皮しか治療方法がないわけですが、この植皮の考え方として、顔をいくつかの単位に分けて、この単位ごとに移植片を分けて皮膚移植をしたほうが美容的に結果が優れているという意見でした。今では世界中で普通の考え方になっていますが、当時は本当にそんな、、、という感じで話を聞いていしました。その後たくさんの経験を積むうちに、彼のこういう考え方がかなり優れたものと実感できたわけです。また彼のところにアフリカ系の女性が自分の口と顎が前に出すぎていて、鼻も低くて、後頭部が後ろに張り出していて、横からみると、頭全体が後ろに倒れそうなバランスに見えるのがいやで、これを治してほしいと来院されたそうです。そこで参加している医師全員にどのような治療の案があるかを彼は質問してきたわけです。たくさんの案が会場から出されましたが、その次に彼が出した写真は患者さんの全身の正面、側面のものでした。ウリョアが言っていたことは、横から見た患者さんの全身のバランスを見なさいと言うのです。お尻はツンと上に上がっていてしかも大きく突出している、そして腰はきゅっと細く、バストは高い位置にしっかり突き出ていて、まず首から下の全身の流れを見てほしいと言うのです。長い脚、ヒップ、腰、バスト、この流れを見たら、顔の流れとしてどういう横顔がきれいかもう一度考えてほしいと言うのです。顔だけを見ると、白人とはあきらかに異なる流れがあり、彼女のようにすこし出ている口と顎、さらにすこし低い鼻、後頭部の形はとても美しい全身の流れの中にあると思う。私は手術をしてはいけないと言ったというのです。これは今は私の頭に常にしっかり入っていることですが、患者さんの中には同じような方も多いなあと最近はよく思っています。たとえばバストが大きいほどきれいというわけではありません。体が細いのに大きすぎるバストを作ると、全身を見た時に体が前に倒れそうなバランスになるわけで、これはとても不自然です。細い体の方はすこしバストを大きくするだけで、全身はとても美しいバランスに仕上がることも多いのです。このように顔だけでなく、バストだけでなく、全身がどうなっているかということをウリョアは私たちにたたき込んでくれたと思います。多くのことを彼から学びましたが、一度参加者全員を彼の自宅に招いて、夕食会をしてくれました。夕食の席にはメキシコで有名な歌手をよんでくれて、彼女の歌声を楽しませてくれたり、豪邸の中のいくつかの部屋を見せてくれたのですが、一つの部屋がナポレオンの遺品をたくさん集めた部屋で、まるでナポレオン美術館というくらい、すごい部屋でびっくりしたことを覚えています。メキシコも美容外科では優秀な医師がたくさんおられる国で、現在も国際美容外科学会の理事の一人にアルトロモンタナーナという医師が入っています。彼もメキシコでウリョアのあとを継ぐようなすごい医師だと思っています。将来きっと国際美容外科学会の会長になると思って楽しみにしています。その頃にはコロナの騒ぎがおさまって、メキシコで世界中の美容外科医を集めて盛大な学会を開催してほしいと思っています。メキシコシティーは残念ながら少し治安が悪く、大気汚染も深刻なので、可能ならユカタン半島の先端にあるカンクンなどで、美しいメキシカンカリブの透明な海と真っ白の果てしない砂浜のあるところで、学会を開催してほしいと願っています。